「りもーね」のナポリタンセット

※写真:藍沢撮影

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 僕はこれといって食に頓着というものがなく、大概の食べものはおいしくいただけてしまう所が存在しているのだが、ひとつだけではあるものの、一家言を持っているといえる料理がある。それが、パスタの王道と呼ばれている、スパゲッティ・ナポリタンだ。
 大学に上がったころから、ひとり暮らし、しかも手先が不器用で料理がまともにできないという僕にでも、簡単に作ることのできる料理として、ナポリタンはとても重宝してきた。時に自分で作りもしたが、時に市販のパスタソースを購入してみたり、またある時はパスタ専門店さんのものを食べに行ってみたりと、僕のナポリタンに対するこだわりは、普通のひとのそれより、だいぶ強い部類に属するのではないかと思っている。
 前述の通り、手先の不器用さが災いして料理が苦手な僕なので、僕が自分自身で作ったナポリタンは、正直な所、お世辞にもおいしいとはいいがたいようなものになる。野菜などを調理するのが得意ではないので、必然的に具なし、茹でたスパゲッティへとトマトケチャップをあえて軽く炒めただけの、簡易版ナポリタンのような感じだ。これでおいしいわけがないともいえるのだが、あまりにも食材がない時は、これだけでもこと足りる。
 おいしいナポリタンを食べたいとなれば、やはり市販のパスタソースを買うか、どこかのお店に行って食べた方が確実なので、僕はしばしば、さまざまなメーカーのパスタソースを食べ比べたり、洋食屋さんのナポリタンを食べ歩いたりしている。お金がかかるのは痛い所ではあるものの、それでもナポリタンにだけはこだわりたいがため、多少の出費ならば惜しまないと割り切っている所もある。
 そんなナポリタンオタクともいえる僕であるが、ひとつ、すばらしいクオリティのナポリタンと廻り逢ったできごとがあった。なにげなく立ち寄った、一軒の洋食屋さんの看板メニューになっているナポリタンに、すっかり虜にされてしまったのだ。
 その洋食屋さんは、僕の住んでいる、滝沢市のIGR滝沢駅前に居を構える「洋食屋りもーね」さんである。かつては盛岡市玉山区の方に店舗があったのだが、近年になって滝沢駅前に居を移してきた。頻繁に滝沢駅を利用する僕も、近所を通ることがよくある。
「洋食屋りもーね」さんの看板メニューは、お店の看板にも実際に書かれている通り、ナポリタンだ。他にもさまざまな種類のパスタを取り扱っているものの、やはりメインの看板メニューというだけあって、ナポリタンのおいしさは、他のパスタメニューを軽く凌駕するような、すばらしいものだった。
 スパゲッティは丁寧に茹で上げられているが、店主さんに伺った所、いちど茹でたパスタを、調理の際になってしっかり炒め上げるという調理法になっているらしい。これにお店の特製のナポリタンソースを絡めて手早く調理して、温かいままで提供してくれる。料理人さんの腕が問われる場面ではあるが、手際が非常によくて、調理風景を見ていて思わず感心させられたものだ。
 このナポリタンが、実に美味なのである。
 トマトの風味を損なわず、それでいながらじっくりと熟成されたような、手作り感のあるナポリタンソースが、独特の茹で方のスパゲッティにほどよく絡んでいる。調理時の手際のよさからもわかったことだが、相当にナポリタンに強い愛着を持っていない限り、これだけの味は生みだすことができないだろうと、割と本気で思わされたほどに、このナポリタンは本当においしかったのだ。食べていて思わず、頬が緩んでしまうくらいに。
 普段、僕は滅多に笑うことがないといわれる。だけど、この「洋食屋りもーね」さんのナポリタンを食べている時は、笑っている。このお店の作りだした、至高のナポリタンの味は、食べているひとたちに幸せなひと時を提供してくれるものだと、僕は信じている。