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第3回会合から始めた、リレー小説の第7回になります。
今回もひとり400字ずつを書き足しています。
ほとんど原文ママ、細部のみの修正になっています。
それでは、どうぞ。


・執筆順

藍沢→杉村→今和



【前回】
http://ginganovel.blog.jp/archives/18241560.html



藍沢:

「……え? ボクがいた時間は、夜だったはずじゃ……」
 ボクは思わずそう呟いていた。
「ええ。たっちゃんの『身体』は、現実の中で、夜の公園にいたままだわ。いまのたっちゃんがいるのは『意識』の世界なの。もちろん、私もたっちゃんの『意識』のひと欠片でしかないのよね。それでもたっちゃんは、たとえ『意識』の中であろうとも、私を求めた。ここまでは私もはっきりとわかることよ」
 みっちゃんは歌うように、滑らかに言葉を紡いでゆく。そんな彼女がボクの意識から生まれている存在であることを、まるで感じさせないかのように。
「いま、こうして夕日の中にいることにも、間違いなく意味がある。それは、たっちゃんがあの時を忘れていない証だわ。たっちゃんは私を忘れてはくれなかった。私も、死んでもたっちゃんを忘れなかったから、これはお互いさまなのかもね」
 そこまで喋り、みっちゃんはくすくすと笑う。
 しかし、次の瞬間、彼女の表情はまったく別の方向を向いていた。まるで、これから悲しいなにかを話すかのようだった。

杉村:

「みっちゃん?」
 ボクはそんな彼女を不思議と見つめていた。
「たっちゃん……あのね?」
 そこに一陣の風が吹いた。ボクは突然のことで目をつむってしまう。
『幸せだよ』
 ボクは目を開いた。すると一本の桜の木が目の前に現れる。その木の花弁は綺麗に咲いていた。
「みっちゃん?」
 ボクはすぐに彼女を探す。まるで母親を探す子供のように。
 しかし、彼女はどこにもいない。
「どこ?」
 ボクの目にはしだいに涙が溢れ出てくる。
(私を探して?)
 彼女の声が頭の中に響いた。 
「どこ! みっちゃん!」
(あの公園のあの場所で、私はあなたを待っています)
「みっちゃん!」
 目の前にある桜の花弁は『見つけて』というように風でゆれていた。
 そして暗闇が僕を支配する。
 次に目を開くと、ボクは自分の部屋で目を覚ましていた。
「もういちどあの場所に……」
 ボクは一言だけつぶやいた。

今和:

 ボクは走り出した。部屋の中にあるものを蹴散らかし、鍵をかけるのも忘れてアパートの外階段を駆け下りた。
『あの場所で……』
 あの場所……そう、あの場所だ!
 ボクは息が上がるのも絶え絶えに、街を駆け抜けた。ブロック塀を曲がるところで自転車とぶつかりそうになった。
「すみません!」
 それだけ言って、ボクは止まることなく突き進んだ。
 それからどれだけ走っただろう。ボクの中ではたったの数秒のように思えていたが、実際には何十分もの時間が過ぎていたことだろう。
 ボクは、〝その場所〟に着いた。
 公園のその場、そこは、滑り台の上。
 桜の木に一番近くて、垂れた桜の枝から花を摘むことができた、思い出の場所。昔、春が訪れる度にみっちゃんに摘んで上げた思い出の場所。
 見ると、いまも枝垂桜が滑り台を覆い隠そうと生い茂っていた。



【続き】
http://ginganovel.blog.jp/archives/20361714.html