かつどん協議会

※この記事に最初に足を運ばれました方は、以下のリンク先を先に見てくださいませ(礼)

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【参加・出展情報】
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毎月26日にお送りしています、コーナー「藍沢篠の書架」第16回をお送りいたします。
今回の紹介は、原宏一さんの「かつどん協議会」です。
書影は上の写真の通り。
集英社文庫より好評発売中です。

~あらすじ~

かつどんにとって最も重要なものは何か。
豚肉、卵、ご飯、玉葱――
具材それぞれの代表者たちが、かつどんへの愛と名誉のためにバトルを繰り広げる「会議」の顛末とは?
(集英社文庫版あらすじより)

~感想・雑感~

冬といえば、とにかく温かい食べものが恋しくなる季節です。
その中で、みなさまならば「ごちそう」といわれて、なにを思い浮かべるでしょうか?
この作品では、その中でも特に庶民のごちそうと名高い「かつ丼」がフィーチャーされています。
自分はかつ丼はさほど食べないのですが、好きなひとはとことんこだわりますよね。
そんなかつ丼へのこだわりが、まさかの形で作品となったのが、今作といえましょう。

さて、内容の方へ入ってまいります。

主人公・蓑田は、かつ丼が大好きな青年です。
どれくらいかつ丼が好きかといえば、行きつけの食堂のかつ丼の玉葱の切り方の違いを見抜くレベル。
食堂のおかみさんからも「あんたほどおいしそうにかつ丼を食べるひとは、そうはいないよ」といわれています。

そんな彼は、とある理由から会社を辞めてしまい、暇を持て余しています。
ある日、いつものごとくかつ丼を食べていた所で、おかみさんから「とある会合にでてくれないか」といわれます。
それこそが表題の「かつどん協議会」です。

蓑田が食堂の旦那さんの代役として出席した回、初回では、蓑田はかつ丼の肉の厚さについての意見を述べますが、これが「かつ丼といえば豚肉」という代表者の怒りを買ってしまい、会議はグダグダに。
他にも「かつ丼といえば卵」「かつ丼といえばごはん」「かつ丼といえば玉葱」という、さまざまな意見の持ち主さんたちが登場し、事態はよりグダグダな方向に走り始めます。

そもそも、なぜ「かつどん協議会」が始まったかといえば、ハンバーグに覇権を持ってゆかれたから、という、のっけからしょうもないといえばしょうもない理由だったり。
そのために、かつ丼の人気回復のキャンペーンを行いたいのが、会合の目的なのでした。
でも、大衆食としてのかつ丼の人気は、実際にはまだまだ衰えてはいませんよね。

さて、話は戻りますが、今度は「かつ丼を推進するキャンペーン」自体を叩き潰せというひとまで登場します。
さらに「かつ丼といえば醤油」「かつ丼といえば砂糖」というひとまででてきて、より話は混迷を極めます。

そのすべての話に収拾をつけるのは、事務局長さんなのですが……
オチは読んでみてのお楽しみですので、ここでは明らかにしません。

ある意味、現代版の「どんぐりと山猫」を読んでいるような気分にさせられる、そんな痛快な物語です。
ただ、ここまでシュールに話をまとめあげられるものなのか、とも、唸らさせられる作品でもあります。
思わず笑ってしまう最後を見届けたい方は、ぜひ読んでみてくださいませ。

~書籍データ~

初版:1997年5月(ベネッセコーポレーション)

文庫:1999年2月(幻冬舎文庫)
  :2009年1月(集英社文庫)

~作者さんの簡単な紹介~

原 宏一(はら・こういち)

1954年生まれ。長野県生まれ、茨城県出身。男性。
1997年に「かつどん協議会」を発表しデビュー。
1998年に「こたつ」「極楽カンパニー」「姥捨てバス」を相次いで発表。
1999年に「床下仙人」を発表。
その後、ほとんどの著作が初版止まりでいちどは作家を辞める決心をするも、2007年に「床下仙人」が某書店の店員さんの目に留まり、初めての増刷が決定。以降、再び作家として活動を始める。
2007年に「天下り酒場」を発表。
2009年に「へんてこ隣人図鑑」を発表。
同じく2009年に「ヤッさん」を発表。自身初のシリーズものとなる。既刊4巻。テレビドラマ化された。
その他の主な著作に「ムボガ」「ダイナマイト・ツアーズ」「暴走爺」「穴」「佳代のキッチン」シリーズなど。
独特の味わいのある文体と作風に、鋭いエッジを兼ね備えた、中毒性の高い作品に定評がある。



……というわけで「藍沢篠の書架」第16回は、原宏一さん「かつどん協議会」でお送りいたしました。
この紹介から、実際に本をお手に取っていただけることを切に願っています。

それでは、次回をお楽しみに。