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 十二月十三日。今年もまた、六花と僕の誕生日がやってきた。
 僕は二十二歳になった。あの日、冷たい水底に沈まずに済んだのなら、六花も僕と同じように二十二歳になるはずだった。一緒に誕生日を迎え、ともに笑いあうはずだった。
 そうなるはずだった未来をゆがめ、悲しみしか残らないようなものに変えてしまったのは、他でもないこの僕だ。僕が六花に恋ごころをいだいたりしなければ、あんなことにはならなかったのかもしれないのだから。
 六花に恋ごころを抱いたことが、僕の犯した罪だった。六花を喪うことが、それに対する罰だった。いまではそのように思えてならない。
 その罰によって刻まれた傷を背負い、僕はこれからも生き続けなければいけない。
 再び雪が僕の上に降る、その日がくるまでは。

 ねえ、六花。前にきみに、きみのことをまだ好きでいていいのかと訊いたけれど……あれは取り消すよ。
 あの問いに関しては、訊く間でもなかったんだ。僕はきみのことを、好きでいてはいけなかった。だからきみはいま、僕の目の前にはいないんだからね。こんな簡単な事実にも気づけなかった自分のことが、ものすごくバカに思えたくらいなんだよ。
 僕の恋ごころがきみを殺してしまったようなものなんだから、これは仕方ないことじゃないかと思う。僕はその罪を受け入れて、雪が降る日を待つことにするよ。

 あとふたつの問いについても、もう答えてくれなくて構わない。
 このまま生き続けていいのか。
 そして、きみが僕のことを恨んでくれていないかどうか。
 なんとなく……なんとなくだけど、両方とも、自分の中で答えがでてしまったからね。
 確証はないけれど、おそらく当たっているんじゃないかと、そう思うよ。

 今年こそは本当に、雪が降るといいな。
 今年はいつもより順調に気温が下がってきているから、もしかすると、近いうちに本当に雪が降るかもしれないね。
 僕の望んだその瞬間は、確実に近づいてきてくれている。そう信じたいよ。
 そうなったら、僕は……


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 霧ちゃんの教えの甲斐あって、私はなんと赤点ゼロで試験期間を乗り切った。高校に入ってから初めて、追試を受けずに済んだのだ。それは各教科の先生方にも驚かれるような、小規模な快挙だった(ちなみに、教えてくれた霧ちゃんの方は学年三位という好成績だった)。
 そんな奇跡的な試験期間が終わってから、私は本格的に別のことを考え始めた。
 考えていたのはいうまでもなく、セッちゃんのことだ。
 こんなに集中してなにかを考えたのは、生まれて初めてだった。しばらくの間、私は寝ても覚めてもセッちゃんのことばかりを延々と考え続けていた。
 いったいどうすれば、セッちゃんの助けになってあげられるのだろう。六花さんに似ている私にしかできないようなことというのは、いったいなんだろう。セッちゃんはなぜ、あの唄が好きなのだろう。
 セッちゃんと六花さんの誕生日である十三日を過ぎても、私はなお、考え続けた。

 その日、私は例によって、あの唄を延々と聴きながら、セッちゃんのことを考えていた。
 切なく響く男性歌手のボーカルをバックに、私は考え続ける。
 ――ここしばらくの私、セッちゃんのことしか考えていないなあ。
 セッちゃんのことを思うと、なんとなく鼓動が早くなるように感じる。あのかわいらしい笑顔を思いだすだけで、幸せな気持ちになれた。
 でもいまは、そんなセッちゃんは私の前にはいない。彼が私を拒絶してから、もう一ヶ月半がすぎようとしている。
 それでも私は、セッちゃんのことが忘れられなかった。あの笑顔がもう見られなくなってしまうのは、嫌だった。なんとしても私は、セッちゃんの力になってあげたかった。
 ――あれ?
 少しだけ、不思議に思った。セッちゃんは私にとって、どんな存在だったっけ?
 大切な存在だということは、別れから一ヶ月半がすぎたいまでも変わらない。だけど……なんだろう、それだけではない気がする。

 ……セッちゃんのことを思う時、私はなにを感じていた?
 ……どんなふうに、思っていた?

 ――幸せ、だと、そう思ってなかったかな?

「……!」

 そして、私は気がついてしまった。自分の抱えている、その気持ちに。
 ――そうか。だから私はセッちゃんのことを、ここまでも助けたいと思っているんだね。
 やっと、答えを見つけた気がした。
 私がセッちゃんにしてあげられることが、はっきりと形を成した。
 ――本当は簡単なことだったんだね。私がもう、知っていたことだったんだね。
 その日、私は眠ることができないままで朝を迎えた。

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「十七歳の誕生日おめでとう、みぞれ」
「本当にありがとう、霧ちゃん!」
 十二月十九日土曜日、お昼。私と霧ちゃんは、近所のファミリーレストランでふたり、ジュースで乾杯をしていた。
 きょうは私の誕生日ということで、霧ちゃんがおごってくれるということになっていた。霧ちゃんが事前に頼んでくれていたらしく、選んだ料理の他に、小さなバースデーケーキがついてきた。料理を食べたあとで、おいしくいただいた。やっぱり甘いものは別腹だしね。
「友達とすごす誕生日なんて、私初めてだよ。かなり嬉しいものなんだね」
「あたしも初めてだから、よくわからないけれど……お祝いするのも、悪くはないもんだね」
「じゃあ、来年の霧ちゃんのお誕生日には、私がお祝いしてあげるよ。お祝いされる気分というものを、霧ちゃんにもぜひ味わってもらいたいな」
「それはどうも。楽しみということにしておくよ」
 霧ちゃんは小さく微笑んでくれた。

「それで、あんたが話したいことってなに?」
 ジュースのおかわりを飲んでいた時、霧ちゃんがようやく、本題を切りだした。
 レストランに着くまでの間に、私は霧ちゃんに話したいことがあると伝えていた。その内容は、いまの私にとっていちばん大切なこと……セッちゃんのことだった。
 私は霧ちゃんの問いに対し、笑顔で答えてみせた。
「……やっぱり、私はセッちゃんを助けることにするよ。放っておくなんてことは、私にはできることじゃないから……私にでもできることが、ようやく見つかったんだ」
 霧ちゃんは呆れたような、それでいながらなにかを諦めたような、複雑な表情になった。こんな霧ちゃんを見るのも初めてだ。どこか新鮮な感じがする。
「……あたしがやめておけっていっても、あんたはどうせやるんでしょ?」
 霧ちゃんがクールに問いかけてくる。いまさらな問いに、私は、
「当たり前だよ。それが私っていうひとだからね。それで結果的に霧ちゃんも助けることができたんだから……きっと、セッちゃんのことだって助けられる。なんとかしてみせるよ」
 この日最高の、飛びっきりの笑顔を添えて答えた。
「…………」
 霧ちゃんは無言で、自分の荷物を漁りだす。しばらくして、霧ちゃんによく似あった、淡い水色のケータイを取りだした。そしていう。
「みぞれ、ケータイだして」
「……え?」
「番号交換。なにか困ったら連絡してきて。そうしてくれたらあたしも、できる範囲であんたを助けるからさ」
 霧ちゃんはいつものように、あくまでクールにいう。それでも、心配してくれているのだということが、はっきりとわかった。
「ありがとう、霧ちゃん!」
 お礼をいって、私も白いケータイを取りだす。
 霧ちゃんはわずかに微笑みを浮かべつつ、私のケータイへと自分の番号を送ってきた。折り返し、私も霧ちゃんのケータイにしっかりと番号を送った。
 番号を交換し終えたあとで、私は改めて、自分のやりたいことを口にだしてみた。
「あすになったら、セッちゃんの所に行ってみる。そして、いいたかったことを全部話してみるよ。どう転がるかは、まったくわからないけれど……でも私は、いまのセッちゃんと話がしたい。前みたいに笑いあえる、そんな関係に戻りたい。ただそれだけなんだよ」
 霧ちゃんはきれいな顔をほころばせ、小さく微笑んでいた。
「……行ってきな。あんたの気がそれで済むのなら、思った通りにやってみればいいさ」
 霧ちゃんはしっかりと私の背中を押してくれた。私は満面の笑みで答える。
「うんっ!」



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