プラネタリウム

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毎月26日にお送りしています、コーナー「藍沢篠の書架」第35回をお送りいたします。
今回の紹介は、梨屋アリエさんの「プラネタリウム」です。
書影は上の写真の通り。
講談社文庫より好評発売中です。

~あらすじ~

恋をしたことがないのに恋多き女と誤解されている中学生の美野里。
付き合ったつもりのない相手から新学期早々に別れ話を切り出されてしまう。
その時、美野里のもとに青いカケラが落ちてくる。
それは後輩の恋心が結晶してできたフレークだった。
(講談社文庫「あおぞらフレーク」あらすじより)

~感想・雑感~

児童文学に関して、ちょっとこの所は離れていた感がありましたが、戻ってみました。
瑞々しさに溢れた作品をひとつ、軽めに紹介してみます。

この短編集は、東京都の架空の地「世界谷」(←モデルはどう考えても世田谷)を舞台に、4編のちょっとした恋の話から構成されています。

表題になっている「プラネタリウム」は、そのすべての話を繋ぐ役割での登場。
直接的には物語に関係がないともいえるのですが、隠れたポイントになっているのは間違いないでしょう。

第1話「あおぞらフレーク」は、恋の味に焦がれる少女の成長。
第2話「飛べない翼」は、自信家の少年の葛藤と成長。
第3話「水に棲む」は、愛に飢えた少女の成長。
第4話「つきのこども」は、つがいの魂を持ったふたりの少女の成長の話になります。

すべてただの成長譚にすぎないのか? と問われると、それはもちろん否。
すべての物語が「恋」と「愛」に彩られ、純粋すぎるくらいに純粋なきらめきを放つ物語です。

こころに触れるということは、非常にむずかしい問題でもあるものの、避けては通れない道。
ひとのこころと「恋」を通じての成長も間違いなく存在するでしょう。
そんな時に、この短編集がキラキラして見えてきたら、作者さんの思いに触れられてきた証かもしれません。

~書籍データ~

初版:2004年11月(講談社)

文庫:2009年11月(講談社文庫)

~作者さんの簡単な紹介~

梨屋アリエ(なしや・ありえ)

1971年生まれ。栃木県出身。
1998年に「でりばりぃAge」を発表。同作で第39回講談社児童文学新人賞を受賞し、翌年にデビューする。
2003年に「ピアニッシシモ」を発表。同作で第33回児童文芸新人賞を受賞。
2004年に「プラネタリウム」(短編集)を発表。
2005年に「プラネタリウムのあとで」(短編集)、「空色の地図」をそれぞれ発表。
その他の主な著作に「ツー・ステップス!」、「スリースターズ」、「夏の階段」(短編集)、「スノウ・ティアーズ」(短編集)などがある。
通称にして自称「ありりん」。法政大学の非常勤講師としても活動している。



……というわけで「藍沢篠の書架」第35回は、梨屋アリエさん「プラネタリウム」でお送りいたしました。
この紹介から、実際に本をお手に取っていただけることを切に願っています。

それでは、次回をお楽しみに。