大丈夫。世界は、まだ美しい。

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毎月26日にお送りしています、コーナー「藍沢篠の書架」第41回をお送りいたします。
今回の紹介は、荒井瑞貴さんの「大丈夫。世界は、まだ美しい。」です。
書影は上の写真の通り。
講談社モーニングKCより好評発売中です。

~あらすじ~

(コミックエッセイにつき割愛)

~感想・雑感~

ひとを喪う、ということは、相手を相当に嫌ったり憎んだりしていない限り、誰にとっても非常につらく、文字通りにこころに穴が空くようなことでしょう。
ましてや、亡くした相手が「最愛のひと」だったら……?
そのダメージは計り知れないものがあるのではないかと思います。

それでは、内容の方へ入ってゆきましょう。

この作品の著者・荒井瑞貴さんも、最愛だったひとを突然に喪い、絶望と孤独の中に叩き落とされたひとです。
専門学校で知りあった、通称「まつきよ」という女性との思い出。
温かいタッチの絵で語られる思い出は、時に優しい過去を、時に残酷な現実を切り取った描写になっています。

世界のどこを探しても、喪われた彼女の代わりになるひとは、もういない……
このひとだけがいてくれればいいというひとが、いない……
誰にも話せず、どこに持ってゆくことも叶わない、そんな想いを、荒井さんは「漫画を描く」という行為で昇華し、ギリギリの所で自分自身を保っているように見えます。

「最愛」といえるのか。
それとも、まだ恋の段階でしかなかったのか。
そんな自問自答とも思える部分も、ときどきでてきます。

でも、すべてを読み終えた時、きっとわかるはずです。
荒井さんの想いは、間違いなく「最愛」に等しいものであったと。
そうでなければ、ここまで傷つくことも、苦しむこともなかったのだろうと。

喪失の悲しみと、そこから這い上がろうとする姿が、温かな絵で丁寧に綴られた作品です。
ぜひ「大丈夫。世界は、まだ美しい。」と思えるような、こころの傷を塞いでくれる作品を焼きつけていただきたいものです。

~書籍データ~

初版:2019年8月(講談社モーニングKC)

~作者さんの簡単な紹介~

荒井瑞貴(あらい・みずき)

1986年生まれ。長野県出身。男性。
2012年~2013年にかけて雑誌「@バンチ」に連載していた「さっちゃんと変な町」でデビュー。
2019年にエッセイコミック「大丈夫。世界は、まだ美しい。」を発表。同作で第8回THE GATE新人賞を受賞。
温かみのある絵と丹念な心理描写で「魅せる」作品を描く、気鋭の漫画家。



……というわけで「藍沢篠の書架」第41回は、荒井瑞貴さん「大丈夫。世界は、まだ美しい。」でお送りいたしました。
この紹介から、実際に本をお手に取っていただけることを切に願っています。

それでは、次回をお楽しみに。